更新料を請求された,更新を拒絶された
更新料は支払う義務がある?
地主さんの中には,土地の賃貸借契約書に更新料に関する規定がないのに,賃貸借期間満了にあたり,当然のごとく,更新料を借地人に請求してくるケースがあります。
しかし,更新料は民法にも借地借家法にも規定がなく,土地の賃貸借契約書やその他地主との間の合意書・覚書等で,更新料支払について合意していなければ,支払う義務はないと解されています。
更新料を請求されたら,まずは更新料支払について既に合意しているのかどうかを確認する必要があります。
更新料支払について合意がある場合でも,合意による更新でない法定更新の場合にも更新料の支払義務があるかについては,争いがあります。
契約書に,法定更新の場合でも支払義務ありと書いてあれば,支払義務が認められると解されます。
更新料の金額について
更新料の金額は,土地の賃貸借契約書等で具体的に算定式が決まっている場合には,当該算定式に基づいて算定します。
具体的な算定式が決まっていない場合には,過去の更新の際にどのような算定式で算定したかも踏まえつつ,当事者間で交渉することになります。ただ,過去の更新の際の算定式というのは,過去において両当事者が合意したので,今回も同様の算定式で算定することで合意が得やすいだろうという意味に過ぎず,過去の更新の際の算定式で算定しなければならない義務があるというわけではありません。
過去の実績もないという場合には,いわゆる相場をにらみながらの交渉になります。東京圏では,更新料の相場は,おおむね借地権価格の3~5%程度とされています。
更新料について地主と合意ができれば,更新料支払の領収証を作成してもらいます。必要に応じ,更新後の土地賃貸借契約書も作成します。一定の算定式に基づいて算定した場合には,次回更新のときのために,その記録も残しておいた方が良いでしょう。
更新後の存続期間について
更新後の借地権の存続期間は,旧借地法適用の時代(平成4年7月31日以前)にはじまった借地の場合には,堅固建物(鉄筋コンクリート造等)の場合には30年以上(法定更新の場合には30年),非堅固建物(木造等)の場合には20年以上(法定更新の場合には20年)となります(旧借地法5条,借地借家法附則6条)。
借地借家法施行後(平成4年8月1日以後)にはじまった借地の場合には,最初の更新時は20年以上(法定更新の場合には20年),2回目以後の更新時は10年以上(法定更新の場合には10年)となります。
更新を拒絶されたら
借地の契約期間満了にあたり,地主から,契約を更新しないとか,高額の更新料の支払に応じない限り契約を更新しないと言われた場合には,どうすれば良いでしょうか?
借地借家法で借地権者の権利は強力に保護されており,借地権の存続期間満了に際して借地権者が契約の更新を請求した場合や,存続期間満了後も土地の使用を継続する場合,地主が更新を拒絶するには,遅滞なく異議を述べるとともに,「正当事由」がなければいけません(借地借家法5条1項,2項)。
この「正当事由」は,地主側でも土地の使用を必要とする事情があることを前提に,借地に関する従前の経過,土地の利用状況,地主が申し出た立退料の金額を考慮して判断されるもので,多くの場合に,相当高額の立退料の提供がないと,「正当事由」ありとは認められません。
例外的に,借地人側が借地を自己使用しておらず,借地上の建物を賃貸している場合には,「正当事由」がやや認められやすくなります。
平成以降の裁判例で,居住用の借地では900万円~6500万円の立退料,営業用の借地では120万円~1億4000万円の立退料の提供をもって「正当事由」ありとされたケースがあります。事案によって本当に様々です。
「正当事由」が認められずに明渡請求が棄却されたケースも相当数あります。
更新をめぐるトラブルについて弁護士に依頼するメリット
更新料の定めが契約書にないのに当然のように更新料を請求してくる地主には,弁護士に依頼して,法的根拠がないことを指摘することが有効となります。
また,地主に更新を拒絶された場合には,「正当事由」がないことを指摘して法定更新を主張するにしても,立退料の金額次第で明け渡することを検討するにしても,弁護士に依頼することが必須といえるでしょう。借地にかかわる法的知識や,過去の様々な裁判例も踏まえ,立退きによって被る損失を明らかにし,借地人側として継続使用が必要な理由や,やむなく明け渡す場合に必要な補償の水準を主張していく必要があります。