漏水被害に遭った
漏水被害に遭ったら
マンションが老朽化してくると,配管からの漏水事故や,屋上・外壁等からの漏水事故が生じがちになります。
マンションの区分所有者が漏水による被害に遭ったら,どうすれば良いのでしょうか?
まずは証拠の確保が最重要
漏水被害に遭ったら,まずは証拠の確保が最重要です。
漏水の状況・被害状況を,写真や,できれば動画で残して下さい。
天井や壁の内装等の水濡れの状況,被害に遭った物品の数量・状態や部屋の中での位置関係が分かるよう,被害に遭っている状態での写真・動画を残します。
管理会社等に連絡して,業者が応急処置に来た場合も,その処置の内容等をできるだけ写真や動画に残します。業者や管理会社とのやり取りの秘密録音もしておくべきです。
後になって,業者が配管部品を交換したかどうかや,どのような措置をしたら漏水が止まったのが争点になるようなこともあります。被害品についても,本当に水濡れの被害に遭ったのか疑わしいと言われたり,部屋のどの場所にあったのかを明らかにするように等と後で求められることもあります。
証拠を残しておくことが,後々大いに役立ちます。
応急処置,原因究明
漏水被害に遭ったら,証拠を残すことを常に意識しつつ,管理会社に事故を報告し,業者を手配してもらってまずは応急処置をしてもらいます。
その後,管理会社や保険会社の側で,漏水の原因を究明しようとするはずですから,調査があれば必ず立会い,写真・動画撮影や秘密録音で,原因についての立証の材料とします。
漏水原因をはっきりさせないと,法的に責任を負うべきなのが誰なのかもはっきりしません。原因の究明とその証拠化は極めて重要です。
場合によっては,被害者側でも専門業者に依頼して,漏水原因について調査報告書を作成してもらうこともあります。
漏水原因が確認されたら,配管の補修・交換工事等をしてもらい,再発を防止してもらう必要があります。
法的責任原因
上階の専有部分の給水管・排水管の老朽化等が原因で漏水したという場合には,上階区分所有者が,土地工作物責任(民法717条/土地工作物である給排水管等の保存上の瑕疵/過失がなくても発生する責任)を負うことになります。
共用部分である給排水管の老朽化や,屋上・外壁等からの漏水等が原因で漏水したという場合には,管理組合が,土地工作物責任(民法717条)を負うことになります。
上階の賃借人が過失により漏水を生じさせた(例えば,洗濯機の排水ホースの外れ等)場合には,上階の賃借人が不法行為責任(民法709条)を負うことになります。
水道や配管の工事の際の工事業者の過失による漏水事故の例も見られ,その場合には工事業者が不法行為責任(民法709条)を負うことになります。
火災保険の利用
被害者が火災保険に加入している場合,内装工事費用については,自分の火災保険会社に保険金を出してもらうことが有効な場合が多くあります。
後述のとおり,加害者側の賠償責任保険では,一般に「時価」の賠償となりますが,自分で契約している火災保険の場合,「新価」といって,減価償却を考慮しない保険金の算定になることが多いためです。被害者の火災保険を使うことで保険料がアップするといったデメリットも一般的にはないので,被害者が自己の火災保険を利用することを避ける理由は基本的にありません。
被害者が自己の火災保険会社に内装工事費用を出してもらった場合には,その部分は火災保険会社が加害者側に求償することになります。
もっとも,火災保険では契約によって補償の範囲が決まるのであり,損害賠償請求ではありませんから,火災保険ではまかなえない損害も残り,それはやはり加害者側に請求する必要があります。
交渉・裁判
漏水について法的に責任を負う者(上階区分所有者,管理組合,工事業者等)が賠償責任保険に加入している場合には,漏水被害について,保険会社との交渉が必要になります。
マンション管理組合が加入している保険で,個々の区分所有者も被保険者になって賠償責任保険特約に加入しているケースも良く見られ,この場合,上階区分所有者に責任がある場合でも,当該保険が適用できます。
管理組合や管理会社が,マンション管理組合が加入している保険を使われるのを嫌がることがありますが,被害者にとっても,賠償責任保険が使えた方が,加害者に直接請求するよりも資力の問題がなく有利ですし,何のための保険かという話になりますので,管理組合や管理会社には,賠償責任保険が使えないかを良く確認するべきです。
保険会社は,漏水による被害を過少評価し,損害額つまりは保険会社の支払額を下げようとすることが良くあります。
築年数の経ったマンションだと,修繕工事費用について,老朽化による減価償却が良く問題となります。
家財道具等が水濡れしたのかも後で良く問題になります。写真では分かりにくいことも多く,乾いてしまえば跡が残らないことも多いためです。
保険会社には,漏水の状況,被害の実態を説明し,証拠を示して,できるだけ多くの損害額を認めさせるよう交渉します。
通常,保険会社が「鑑定会社」の担当者を現場に派遣し,現場の状況を確認の上で,被害者側の損害賠償請求内容を査定します。
交渉では話にならない場合には,漏水について法的に責任を負う者に対して訴訟を起こして損害賠償を請求することになります。責任を負う者が賠償責任保険に加入している場合には,保険会社の弁護士が代理人について,実質的には保険会社相手の訴訟となります。
100%の損害回復は困難という現実
漏水被害の案件を担当していて痛感するのは,居住用物件でも営業用物件でも,漏水被害による損害はかなり深刻なものになることがあるのに,被害者が,漏水被害によって受けた損害を100%回復することは困難である,という現実です。
保険会社は,漏水の責任原因を争ったり,損害の評価を争ったりしてきます。
被害者は,何ら落ち度がないのに漏水被害に遭った精神的被害に加え,なかなか被害が回復されない状況が続くことに精神的苦痛を強く感じますが,裁判所は,財産的損害と別に慰謝料を容易には認めませんし,財産的損害についても,損害額の認定や弁護士費用の損害認定について消極的な傾向があります。
漏水事故の訴訟は長期化しがちで,和解や判決によって最終的に得られる損害賠償の金額も,被害者からすれば,到底,体感している損害の回復に足りないというケースが多いといえます。アメリカであれば,懲罰的損害賠償の制度等により,十分な被害回復が得られるのかもしれませんが,日本の法制度は,被害者に冷淡すぎると感じざるを得ません。
漏水被害の損害賠償請求を弁護士に依頼する必要性
漏水被害の損害賠償請求は,不動産にかかわる案件の中でも,難易度の高いものといえます。法的責任原因の立証や,損害の立証には,弁護士の力が必要です。
被害の程度が軽微であればまだ良い(保険会社による対応等で被害がカバーされるケースもそれなりにある)のですが,漏水事故によって深刻な被害を受けたという場合には,居住用物件でも営業用物件でも,弁護士に相談する必要があります。
保険の弁護士費用特約の利用
火災保険の弁護士費用特約,自動車保険の弁護士費用特約(日常生活上の事故)や,クレジットカードに付帯する保険の特約で,漏水事故の損害賠償請求の弁護士費用がまかなえることがあります。漏水被害に遭った場合には,保険の弁護士費用特約が利用できないか,チェックする必要があります。





