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多額の原状回復費用を請求された

 

退去時に多額の原状回復費用を請求されたら

 
居住用の賃貸借契約を解約して明渡した際に,賃貸人や管理会社から,多額の原状回復費用を請求された場合には,どう対応すれば良いのでしょうか?
 

判例を踏まえた国土交通省の原状回復ガイドライン

 
この問題については,裁判所の判例や,判例を踏まえて公表されている国土交通省の原状回復ガイドラインが,賃借人の負担が過度にならないようなルールを示しています。
 
まず,退去時の「原状回復」とは,賃借人が借りた当時の状態に戻すということではありません。原状回復は「賃借人の居住,使用により発生した建物価値の減少のうち,賃借人の故意,過失,善管注意義務違反,その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と考えられています。
 
賃借人が通常の住まい方,使い方をしていても発生する自然損耗や経年劣化は,賃貸人が賃料の中から費用を出して修繕すべきと考えられ,賃貸人負担とされています(改正民法621条にも明記されました)。
 
賃借人が負担しなければならないのは,賃借人に故意,過失,善管注意義務違反がある場合や,通常の使用を超えるような使用によって損耗・毀損が生じた場合に限られます。具体的には,タバコのヤニや臭い,ペット飼育による損耗,水回りの清掃・手入れを怠ったためにカビが広がった場合,子どもの落書きなどです。
 
そして,賃借人が原状回復費用を負担しなければならない場合でも,壁のクロスや畳床,設備機器等については,耐用年数に応じて,例えば壁のクロスであれば,6年で残存価値1円となるような直線を想定し,居住期間が長くなればなるほど,賃借人の負担割合を減らすという考え方が採用されています(ただし,畳表や襖・障子紙は消耗品扱いなので経過年数は考慮しません。フローリングの部分補修の場合も経過年数は考慮しません)。
 
また,例えば壁のクロスに借主の負担すべき毀損部分があっても,借主が原状回復費用を負担するのは,可能な限り毀損部分の補修工事が可能な最低限度の施工単位(m2単位が望ましいが,毀損箇所を含む一面分までは張替え費用を借主負担としてもやむを得ない)とされています。
 
このように,判例を踏まえた原状回復ガイドラインでは,賃借人の負担範囲は合理的な範囲に制限されています。ですので,賃貸人や管理会社から不合理な原状回復費用の請求を受けた場合には,判例・原状回復ガイドラインを盾にして,反論していくことになります。
 

契約書の原状回復義務規定には注意

 
ただし,賃貸借契約書において,「退去時のハウスクリーニング費用は借主負担」と定めたり,一定期間の経過によって敷金の一定額が償却される(返還されなくなる)と定めているような場合は要注意です。
 
こうした原状回復義務に関する特約は,本来,賃貸人の負担である自然損耗や経年劣化による損耗の原状回復費用を賃借人の負担にするという内容の特約ですが,こうした特約も,賃貸借契約書等に明記してあれば有効,とするのが判例の考え方です(最高裁平成17年12月16日判決)。
 
こうした特約の存在・内容については,賃貸借契約の際に十分注意する必要があります。
 

原状回復をめぐるトラブルへの対応を弁護士に依頼するメリット

 
賃貸人や管理会社は,上記のような原状回復義務に関するルールを十分理解せずに,借りた当時の状態に戻せとばかりに多額の原状回復費用を請求してくることがあります。
 
そのようなケースでは,弁護士に交渉を依頼することで,判例や原状回復ガイドラインを盾にして反論し,多くのケースで原状回復費用を妥当な範囲に収めることができます。
 
多額の原状回復費用を請求してきた賃貸人が,賃借人に弁護士が付いて支払を拒否するや,それ以上の請求を諦めて撤退する,というケースもあります。
 
思いがけず多額の原状回復費用を請求されたら,経験のある弁護士に相談されることをお勧めいたします。

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